土曜日, 10月 14, 2006
映画『真昼の決闘』
先日購入した『真昼の決闘(High Noon/フレッド・ジンネマン監督作品/1952年)』を見ました。何度もTVで見ていたのですが、改めてじっくり見てみると、ゲイリー・クーパー演じるリアルで等身大の保安官がいいですね。クーパー自身が本作で2度目のアカデミー賞を受賞したのもうなずけます。ただし、映画監督のハワード・ホークスと俳優のジョン・ウェインは、クーパーが演じた市民に助けを求め、最後は新妻に助けられる保安官を腰抜け呼ばわりするとともに、作品自体をウェスタンと認めず、後にホークス監督、ウェイン主演で『真昼の決闘』のヒロイズム版ウェスタンの傑作である『リオ・ブラボー』を7年後の1959年に製作しています。ところで、真昼の決闘で面白いことに気がつきました。まず冒頭、丘の上でくわえタバコで仲間を待っているならず者の一人が、なんとリー・ヴァン・クリーフではないですか。デビュー2年目にしてマカロニウェスタンで開花する前の初々しい彼の姿は悪役には見えませんでした。そして町で合流した3人目のならず者、最後は背後からグレース・ケリー に撃たれて絶命してしまう彼です。名前が分からないのですが、彼は『荒野の七人(1960年)』でジェームズ・コバーン演じるブリットと決闘をする相手役の俳優でした。映画は制作費50万ドルの低予算映画(50年前だと1ドル360円だったはずなので、1億8千万円で低予算ってさすがはハリウッド)として企画され、制作のスタンリー・クレイマーは主演の保安官役としてグレゴリー・ペックを希望していたそうですが、彼が『拳銃王(1950年)』で演じた役に内容が酷似していたため、申し出は断られてしまいました。 続いて候補に挙がったゲイリー・クーパーは既に51歳で人気は落ち目だったものの、高額な出演料で可能性はなかったのですが、クーパー自身が脚本に惚れ込み、安いギャラでの出演を承諾したことでこの名作が完成しています。ちなみに彼は潰瘍の痛みと戦いながらの熱演だったそうです。なお、撮影秘話として映画初出演のグレース・ケリーとの実年齢差が28歳であることを気にしていたゲイリー・クーパーは代役を探していたようですが、契約が完了していたのでそのまま撮影は決行されたそうです。なお、グレース・ケリーの美しさに魅了された監督のフレッド・ジンネマンは、彼女のクローズ・アップを必要以上に多用したことで、共演したメキシコ女役のケティ・フラドからクレームが付いたそうです。だからなのか、ケティ・フラドのアップシーンも多かったように思いました。なお、ゲイリー・クーパーとグレース・ケリーは撮影中に本当に恋に落ちてしまったそうです。絵になる二人ですからね。ちなみにゲイリー・クーパーは本作の9年後にガンで60年の人生を終えています。方やグレース・ケリーはカンヌ映画祭で知り合ったモナコ大公レーニエ3世(在位1949年 - 2005年)と1956年結婚と同時に女優業を引退(映画『上流社会』が最後の作品)。1982年52歳の時、モナコの高速道路をドライブ中、心臓発作を起こして交通事故となり他界。ちなみに彼女の出演作品の中では『ダイヤルMを廻せ!(1954年)』が好きです。美人美男子は薄命の典型例みたいな結末は残念で仕方がありません。